一通り、会社の説明が終わると、面接官は、2つほど質問してきました。
「今回募集している業務は、主にビルオーナーへの対応となりますが、賃料交渉の経験はありますか?」
僕は、前前職の会社では、ガチガチにノルマのある新店開発(新しい店を作る仕事)をやりながら、自分の担当するエリア内の既存店の様々な交渉を担当してきました。
賃料交渉や契約更新などはもちろん、改装や閉店の交渉、はては店舗の不祥事の後始末までやるという、大変な職務を担当していました。
それも相手方のビルオーナーや地主は、大手不動産会社、大手鉄道会社、大手銀行系の子会社、大手スーパー等、交渉が大変な相手方でした。
僕は当然やってきたという感じで、淡々と話しました。
「宅建の実務は経験はありますか?」
面接官が気にしているのは、どうやらこちらの方のようでした。
僕は、20代のころ、不動産仲介会社に勤めていたことがあって、宅建の実務経験はありました。
そのことを伝えると、「子会社に不動産会社があるので、出向という形で、その会社の専任の宅建主任者となって頂くか、その会社に入社して頂いて、専任の宅建主任者になって頂くことになるかもしれませんね」と答えてきました。
僕は、「子会社に入社?それは話がちがうんじゃない?」との考えが一瞬頭をよぎりました。
でも、ここでいろいろ問いただしても仕方がないので、「実務経験はありますが、20代の時ですので、ブランクが有るのが、ちょっと懸念されます」と答えました。
しかし、先方が重視している部分で、あまりネガティブな答え方をしてはマズい」と思い直し、「でも、定期的に実務交渉を受けていて、最近では今年の4月に受けましたので、大丈夫です」と言い直しました。
先方は少し安心したようでした。
少し沈黙があり、「こちらからの質問はこれで終わりです。そちらからのご質問は何かございますか?」と言われました。
僕は拍子抜けしました。
大抵は、これまで所属していた会社の転職理由を延々と言わされ、これまでの実績の詳細やら、これまで経験してきたことを我が社でどのように活かしていけるのか?など、いろいろなことを根掘り葉掘り聞かれます。
たったこれだけの質問だったので、今回の面接はちょっと失敗だったのかな、と心配になってしまい、隣に座っているWさんの顔をちらりと見ました。
しかし、Wさんは、特に心配そうな顔はしていませんでした。